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執筆者の写真長谷川 将士

露天商は葡萄を売りたい~明日は来るのか、来ないのか⁉~

「アフリカではどんな風に毎日を過ごしていますか?」と問われて、きちんと説明できる人はいないだろう。とにかく、目が回るほど色々なことが起こるが、一つ言えることは人とのコミュニケーションが増えるということではないだろうか。


特にローカルマーケットや露店、屋台で何か物を買う時、先ずは目を見て挨拶をして世間話をした後に、あっちの卵の方がいいだの、こっちの肉が高すぎるだの、外国人の値段じゃなくてローカル価格にしてくれだの、お釣りが無いだの、とにかくやりとりをしないといけない。


これはナイロビに住んでいた時に書き残していた、そんな日常のやり取りの話です。


ナイロビの長屋近くにて


私の住む長屋はナイロビの中間層エリアにあり、路上で食品や小物を売るストリートベンダー(露天商)があちこちにいる。ケニアに住んでいる一部の日本人が聞くとビックリして「え、何であんな所に住んでいるんですか」と言われてしまう場所だ。


僕以外の外国人といえばナイジェリア人の家族がいるくらいで、アジア人は自分だけだった。オフィスがそこにあるからしょうがないし、一度コミュニティに馴染んでしまえば融通の利く場面も多々ある。


簡易な屋台の上には野菜から果物、CDから靴まで「取り合えず商品を出しとけば何かしら売れるだろう」と言わんばかりに、あれやこれやが売られている。食べ物関係ではジャガイモ、玉ねぎ、人参、リンゴ、マンゴー、唐辛子、ニンニク、生姜、キャベツ等々、ローカルマーケットに並んでいるものが街の路上で買える。


ここら辺の住宅街では近場にスーパーマーケットが無く、こうした食品類を買うためにはよく路上か個人経営の八百屋さんで購入する必要がある。


品質は仕入れ日と関係しており、新鮮で瑞々(みずみず)しいトマトが売られていることもあれば、しなびて干からびる一歩手前のピーマンが売られていることもある。天候が悪くなると仕入れに影響がでるのか、並べられている商品の質は目に見えて悪くなる。


葡萄売りのおっちゃん


今日の夕飯の買い出しをしていると顔なじみの露天商のおっちゃんが声をかけてきた。なんでも新鮮なブドウを仕入れたから早く売りさばきたいらしい。


ブドウを買う予定はなかったが、確かに質は良く、誰かにプレゼントすればいいやと結局財布の紐が緩んでしまった。


小さな一房(ひとふさ)で20シリング(22円)ほど。悪くない買い物だ。ただし、それだけでは露天商の攻撃は止まらない。


「もう一房どうだ、こんなに美味そうならもう一つ欲しくなるだろう」

「いらないよ。自分で食べるわけじゃないし」

「ジャパニーズ!お前、俺がいっつも美味いフルーツを勧めてんのに『また明日!』って逃げるじゃねえか!」

「明日買おうと思うんだけど、明日になると何故かお金がないんだよ。でも今日はお金があるから明日は買うよ。『また明日!』ね」

「分かった、明日は絶対買えよ」


露天商とこんなやりとりをしていると自分がとてもテキトーな人間になってしまった感じはあるが、ケニア人の寛容さに学んだ部分が大きいと思いたい。彼らも駄目元で買ってくれたらラッキーとしか思ってないので、こちらもテキトーに緩く対応してしまうのだ。


さて、経験豊富な読者の方はこう思われただろう。「ああ、これは○○(ご経験のある国をあてはめてお読みください)でよく見る手口だ」、と。そう、彼らの明日やる!は多くの場合は忘れ去られ、水に流され、いつの間にか立ち消えてしまう。


裏を返せば、(相手との関係性も十分考慮して)、自分がちょっと面倒だなと思うことは、この手口を使うとなあなあで済まされてしまう。これが私がケニアでいつの間にか会得していた、多用はあまりお勧めしないテクニックの一つだ(注:長期間の交友関係があり、プライベートにも近い関係性だからこそのコミュニケーションです。仕事の時や初対面の方には絶対に行わないでください)。



(筆者が住んでいた場所の近く。イメージ画像は筆者撮影)

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