世界銀行は10月4日、サブサハラ・アフリカ(SSA)地域の経済見通し報告書「アフリカの鼓動」を発表し、2023年の経済成長率を4月の予測から0.6ポイント下方修正して、2.5%と予測した。下方修正の理由として、インフレ抑制のための金融・財政政策の引き締め、債務の脆弱性の高まり、異常気象、紛争や暴力の増加などを挙げている。2024年と2025年については、それぞれ3.7%、4.1%と予測している。
同報告書によれば、アフリカ経済は域内の大国における経済が低迷を続けていることが足を引っ張っている。エネルギーと輸送に課題を抱える南アフリカの2023年のGDP成長率は0.5%と予想される。ナイジェリアとアンゴラの成長率はそれぞれ2.9%と1.3%と予測されるが、これは資源の国際価格低下と通貨圧力が影響を及ぼしている。さらに、2015年から25年にかけて、サブサハラ・アフリカでは一人当たり年平均GDPが0.1ポイント縮小すると予測しており、資源価格の急落の影響を受けて、成長が後退した「失われた10年」となったと指摘する。
アフリカ経済は債務超過に苦しんでおり、新型コロナの大流行以来、負担が増幅している。同地域の国際開発協会(IDA)が評価する国のうち、高リスクにある、あるいはすでに債務困窮に陥っている国の割合は、2015年の27%から2023年には55%に拡大した(2023年6月末時点)。この地域における債務急増は、債務構成が低利子で長期間借り入れが可能なローン(譲許性ローン)から民間債権者や新興国との二国間債権者にシフトしたことに伴うものであった。その結果、債務返済負担と経済ショックに対する脆弱性が増大した。債務返済比率の上昇は、2022年には域内歳入の31%という驚異的な水準に達し、公共投資や社会プログラムを支援するための財源を枯渇させつつある。輸出の停滞により、生産と投資に必要な輸入品のための外貨の利用可能性も低下する可能性がある。ただし、インフレ率は2022年の9.3%から2023年には7.3%に低下すると予想され、慎重なマクロ経済政策を推進しているアフリカ諸国では財政収支が改善している。
一方、同報告書が「強靭性のポケット(pockets of resilience)」として、高成長を維持する国および地域もある。たとえば東アフリカ共同体(EAC)では4.9%、西アフリカ経済通貨同盟(WAEMU)では5.1%と好調な成長が予測されるなど、アフリカ域内での成長格差が更に顕在化する見通しである。
経済的な不安要素があるにも関わらず、一部の国では長期的な成長率を上回り、成長が加速している。ケニアでは今年3月から7月にかけて野党によるデモが展開して経済活動が減速したが、農業の拡大と個人消費の持ち直しにより、成長率は2022年の4.8%から2023年には5.0%増加すると推計される。コートジボワールでは力強く景気が回復しており、異常気象によりカカオの生産と輸出が低調だったものの、製造業が成長を牽引したため2023年のGDPは6.3%増加すると予想している。
(画像は公開された世界銀行レポートより抜粋)
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