動画ストリーミング市場で競争が激化する中、これまでアフリカ市場を牽引してきたネットフリックスがトップシェアから陥落した可能性が高まっている。
世界最大の動画ストリーミングサービスを提供するネットフリックスは、アマゾン・プライムやショーマックスとの競争が激化するにつれ、アフリカでの市場シェアを失いつつある。
ネットフリックスは2021年にはアフリカ市場の約40%を占めていたが、テクノロジー調査会社のオムディアリサーチ(Omdia Research)によると、現在シェアは35%に後退し、40%を占めるショーマックス(Showmax)にトップの座を明け渡したとされる。
熾烈なアフリカ市場のシェア争い
アフリカで動画ストリーミング市場は元々、地元通信会社が地の利を生かして展開していた。しかし、2016年以降はネットフリックスを皮切りにグローバル企業が次々と参入し、競争が激化している。
2022年にはネットフリックス、ショーマックスに次ぐ17%のシェアを占めていたボーダコムが展開するビデオプレイがサービス廃止に追い込まれるなど、熾烈なシェア争いを続けている。
ショーマックスのマーク・ジュリー最高経営責任者(CEO)はメディアの取材に対して、継続的なコミットメントが奏功し、過去4年間で有料会員数が前年比26%増加したと述べた。
また、同社は2023年にコンテンツ制作と顧客獲得のために10億ドルを投じており、さらなるシェア拡大に向けてアクセルを踏み込んでいる。
大きな開拓余地があるストリーミング市場
アフリカの有料動画配信サービス市場は年間10.4%の成長が見込まれている有望市場で、業界分析会社Digital TV Researchのデータによると、2022年末時点のアフリカの有料テレビ加入者数は4,100万人だ。
だが、動画ストリーミングの加入者数の10%未満に止まり、開拓の余地が大きい。
ネットフリックスやショーマックスのような主要企業は新規顧客を獲得するために、新しいコンテンツへの投資や一定期間は無料利用を可能にするなど、過去3年間に様々な成長戦術を展開してきた。
一例ではネットフリックスが2021年から2年間、ケニアで無料サービスを提供した。今年11月に無料プランを廃止し、継続利用を希望するユーザーは月額200シリング(約200円)の料金を支払うプランにシフトしている。
ネットフリックスの現在地
Netflixは2016年にアフリカに参入し、ブロードバンドの費用や、不安定なインターネット、低所得な顧客層に苦戦しつつも、2021年には推定260万人まで加入者を増やしていた。
Netflixのアフリカ戦略は、地元制作局からの版権買取りと、自社のオリジナルコンテンツ制作を組み合わせている。
この2つの製作ラインを軸に、ネットフリックスは6年間で1億7500万ドルを費やしたが、過去2年間で投資を回収し、2億3000万ドル以上を稼いだとされる。
オムディアリサーチの調査によれば、ユーザーを国別に見ると、最大は南アフリカで全加入者の73.3%を占めている。アフリカで最も人口の多いナイジェリアが10.5%、次にケニアが3.9%と続く。
『ノリウッド』として有名で、ネットフリックスが積極的に版権を買い取っているナイジェリアで10%程度にとどまっているため、このアフリカ最大の2億人を超える大国でのシェア拡大が成功するかどうかに注目が集まる。
求められる新興国での拡大戦略
昨年は加入者数の減少が大きく取りざたされたネットフリックスは、米国やヨーロッパのような成熟市場での停滞を懸念している。
米国のような成熟市場では加入者数が減少している同社だが、アフリカでは今年第1四半期に一部の市場で値下げを行ったおかげで成長している。
全体で見れば加入者数は6.8%、収益は13.7%増加しており、今後は先進国以外の地域におけるシェア獲得が更に重要となってくる。
更なるサービス加入の障害となっているのは、同社の基本的にクレジットカードやデビットカードで支払いが行われるように設計されているが、アフリカではこれらのカードの普及率が低く、決済がスムーズに行われないことだ。
ケニアといった一部の国ではモバイルマネーからの決済が一応は可能だが、手続きが煩雑で分かりにくく、ユーザーが手軽に利用できるという水準には至っていない。
今後はサービスプロバイダーとして、新規加入者向けにサービスの使い勝手を改良し、広くがストリーミングサービスを利用できる環境を整えられるかが喫緊の課題だ。
(イメージ画像はO-DANより。@freestocks)
<参照元URL>
Comments