多くのアフリカ諸国では、ローカル市場が庶民の生活を支える、大きな役割を担っています。ローカル市場とは、スーパーやショッピングモールではなく、地元の卸売り・小売り商人が個々に店を構え、規模が大きくなって形成された地域密着型の商業地域です。
たとえば衣類や調理器具をローカル市場で探すと、中国や中東諸国等から輸入されてきた安価で手ごろな商品を数多く見つけることができ、スーパーで買うよりも2~3割、時には10分の1の価格で購入できることすらあります。
高品質ではありませんが、とにかく割安な商品を手に入れたいと考える庶民層は、これまでローカル市場を愛用する傾向がありました。しかし、ケニアでは最近、様相が変化してきているようです。
本記事ではBusiness Dailyの記事に準拠しつつ、ケニアのローカル市場で起こっている変化をご紹介します。
中国人業者の台頭で商売が圧迫
ナイロビでも有数のローカル市場であるカムクンジ・マーケットでは、所せましと商品が並べられています。商品も多様で、バケツやマットレス、カーペットや毛布、スーツケースから茶こしまで、ありとあらゆるモノが陳列されています。
ナイロビにあるショッピングモールのように空き店舗はなく、小さな店が密集し、何百人もの商人たちが商売に躍起になっています。
しかし、最近は景気が良いとは言えない状況のようです。カムクンジ商人協会のピーター・ムトゥリ・カリウキ会長は倉庫を設置して大量に販売する中国人業者や、チャイナ・スクエアや南アフリカの小売業者であるパンダ・マートのように、安価な商品を販売する店舗が参入してきたことで商売が落ち込んでいると指摘します。
カリウキ会長によれば、カムクンジはかつて最安値で商品を購入できる市場でしたが、今は外国人の卸売業者が台頭し、現在ではその存在感は薄れているとしています。カムクンジにある商品の大半は中国からのもので、現在は中国人業者がケニアに進出したため、市場が牛耳られていると、厳しい商売状況を説明しています。
中国系商人の中には大型倉庫を構え、中国から大量に輸入することで低価格で卸売りを展開する者も多く、こうした業者や彼らが展開するオンラインショップにアクセスすれば、わざわざローカル市場に行かなくてもより安価な商品が購入できる状況です。
通貨安の追い打ち
中国人業者との競争に圧される地元商人たちですが、ここに追いうちをかけたのが現地通貨安です。現地通貨のシリングが過去30年間で最大の落ち込みを記録し、商人たちが仕入れにかける経費は上がる一方です。
Business Daily氏が取材した女性商人は、現在は商売で利益を上げることができず、以前は年に二回は中国に仕入れに行っていましたが、今は物価が高くてもう行くことができないと答えました。
また、ある地元商人は、以前の利益の4分の1しか得られないと答えています。中国人業者の台頭のみならず、通貨安により収入が劇的に下がっており、地元商人は困窮しています。
懸念される中国人排斥の動き
資本主義経済である以上、たとえ外国人であっても参入してきた業者の権利は保護されるべきですし、公平な競争の上では勝ち負けが存在するのがビジネスの常です。
しかし、一部の中国人ビジネスマンが入国許可や労働許可を不正に入手している事例が確認されており、そのことが地元商人たちの感情を逆なでしています。
昨年4月には地元貿易商人たちが中国人業者の流入に抗議して政府を提訴しました。これは、中国企業が超低価格で地元商人を困窮させ、廃業に追い込んでいるとして、入国管理局に中国人への雇用許可証と営業許可証を発行するのを止めるよう求めたものでした。
訴訟の代理人を務めたキベ・ムンガイ弁護士は、中国人業者の流入に伴い、ケニアの200万人以上の雇用が危険にさらされているとしています。
このように中国人ビジネスマンの流入によって、ケニアで投資や雇用が増え、経済に良い影響をもたらしている一方、一部のローカル市場では市場を奪われた地元商人側の反感が高まっています。
許可証の透明性を向上し、法に則った手続きを徹底させることはもちろん必要ですが、経済的な困窮が進んだ場合、地元商人による反中感情が激化するかどうか、懸念が募ります。
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