エジプト政府は10月17日、アフリカ諸国としては初となるサステナビリティ・パンダ債(中国元建て国債)を発行した。発行額は4億7870万ドル(約735億円)相当で、急成長する中国の債券資本市場にアクセスが可能となった。
エジプト政府は物価高や海外投資の流出に直面しており、主要な格付け会社が同国の長期債を軒並み格下げしている。直近ではフィッチが11月3日、長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を「B」から「B-」に格下げした。
モハメド・マイート財務大臣は11月4日、フィッチによるエジプトの格付け引き下げは、地政学的緊張を含む複雑な世界的課題から生じる極度の外圧に対するエジプトの苦闘を反映していると述べた。
このような状況下、エジプトは現地通貨建て国債を発行し、国際市場での多様化を実現することで必要な資金調達を試みている。
「サムライ」に続き「パンダ」
エジプトの現地通貨建て国債の発行の事例としては、日本が挙げられる。2022年3月に総額600億円のサムライ債(政府や企業といった海外の発行体による日本円建て国債)の発行を決定し、中東アフリカ諸国で初めて日本の資本市場にアクセスした。
また、2回目の発行が閣議決定されており、11月までに起債する見通しである。
今回のパンダ債発行ではアフリカ開発銀行とアジアインフラ開発銀行が部分的に信用保証しており、低下するエジプト国際の格付けと信用をカバーする狙いがある。
アフリカ開発銀行のモハメド・エル・アジジ北アフリカ局長は、「アフリカ開発銀行の地域メンバー国が、アフリカ開発銀行のAAA信用格付けを活用して新しい市場に参入し、国際的な投資家から競争力のある条件で持続可能な資金を調達可能であると示す完璧な例」だと述べた。
資金調達の多様化で気候変動対策を推進
パンダ債の発行に関して、アジアインフラ投資銀行はエジプトの包括的成長とグリーン目標を支援し、パリ協定に沿ったデジタルおよび交通プロジェクトに資金を提供すると説明しており、二酸化炭素排出量の削減とエジプト国民の生活向上に貢献するものとみている。
コロナ禍以降、不安定化する国際情勢を反映し、アフリカ諸国では財政状況が悪化している。他方、気候変動による災害は増加の一途の辿り、対策が急務とされている。
エジプトが切り開いた現地通貨建て国債の活用は、こうした国々にとって必要な資金調達を実現する上で重要な前例となる。
アフリカ開発銀行で金融セクター開発を担当するアフメド・アタウト氏は、「パンダ債市場で発行するアフリカの国はエジプトが初めてだが、これが最後になることはないだろう」と述べ、開発資金をより集めるため、アフリカ開発銀行が支援をする用意があると説明した。
(イメージ画像はO-DANより)
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