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執筆者の写真長谷川 将士

「SONYのアフリカ市場開拓史」後編~多国籍コングロマリットとしてのアプローチ~

日本企業どころか日本人すらほとんどアフリカに居なかった時代。SONYのビジネスマンはトランジスタラジオが入ったカバン一つで大陸中を渡り歩き、アフリカで同社の製品は人気を博しました。


前編ではSONYのアフリカ進出の始まりにフォーカスしましたが、後編では主に直近のアフリカ進出、特に同社が実践する多角的なアプローチに注目してご紹介します。


コングロマリット企業としてのSONY


今でも「SONYといえば家電」というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。そのイメージは正しいのですが、同社は現在、家電メーカーとしてではなくコングロマリット(異業種同士の企業が発達した企業体)として拡大を続けています。


SONYは複数の子会社を持っていましたが、2021年にソニーグループ株式会社が発足しました。


6つの事業会社(ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション、イメージング&センシング・ソリューション、金融)として再編しています。


アフリカ進出という文脈で重要となるのは、これら6つの事業会社がSONYという土台を共有しつつも、それぞれが連続的に市場参入を繰り返し、修正を行っていることです。


また、ビジネスだけではなく、アフリカへの支援を通じて、人材育成や教育活動にも注力しています。以下ではそれぞれの注目事例をピックアップします。


ソニー銀行:アフリカ開発銀行が発行するグリーンボンドへの投資


ソニー銀行は2022年9月、アフリカ開発銀行が南アフリカランド建としてはじめて発行するグリーンボンドへの投資を実施しました。投資額は約16億円です。


この債券は気候変動対応プロジェクトへの融資に充当され、一例としては太陽光発電所の建設、灌漑施設の建設、鉄道建設、森林の保護等に用いられています。


アフリカ開発銀行が発行したグリーンボンドの発行総額は、2022年6月時点で38億ドル、17ヵ国45件のプロジェクトに資金提供を行っています。


アフリカは世界で最も気候変動の影響が大きい地域であり、干ばつや洪水の頻発により、食料不足が深刻化しています。グリーンボンドへの投資はSONYが企業としてどのように環境問題と向き合うかを示す材料にもなっています。


ソニーモバイル:Xperiaで南ア進出も、現在は撤退


日本製スマートホンの代表格ともいえるXperiaですが、確認できる範囲では2013年時点で既にアフリカ市場に投入されています。当時のアフリカ市場は好調な経済成長を続けており、未来の市場として期待感が高まっていました。


しかし、2019年にソニーモバイルはアフリカ市場から撤退します。要因としては中国メーカーの台頭によって市場で苦戦していたことや、グローバルな事業再編の必要性があり、注力市場を絞らざるを得なかったこと等が挙げられます。


市場からは撤退しましたが、未だにアフリカ各国ではXperiaを使い続けているなど、根強いファンが相当数います。


またアフリカでソニー製のスマートホン製品が見られる日を期待したいですね。


ソニーミュージック:ハードとソフト両面でアフリカ進出に成功


ソニーミュージックは1996年から南アフリカ市場に進出し、今ではアフリカ各地の音楽ニーズに合わせた商品を、ハードとソフトの両面から販売しています。


よく成功事例として注目されるのが、大型かつ低音重視のオーディオ機器の販売でした。アフリカ人は音感に優れた、特に低音の聞き分けができるユーザーが多くいます。


そこで同社は、これまで先進国に向けに作っていたものよりも、低音の品質に重視した商品を展開したところ、これが大ヒットしました。


一時期は南アのオーディオ機器シェアの85%を獲得した時期もありました。


また、ソフト面ではVEVO、Apple、You Tube等と連携することで、音楽コンテンツを配信しています。各国で有名歌手と契約し、地元の携帯通信会社を経由して音楽コンテンツを販売しています。


特に、2019年にはBoomplayとパートナーシップを結んだことは注目を集めました。


同社はアフリカ最大のミュージック・ストリーミングプラットフォームであり、2023年現在、1億人以上の月間アクティブユーザー(MAU)が利用しています。


CSR活動:医療や教育等で独自プロジェクトを展開

SONYは自社が持つ製品やノウハウを駆使し、独自の社会貢献活動を継続してきました。一例では、2010年にサッカーの南アフリカW杯時では、ガーナとカメルーンでパブリックビューイングを行い、アフリカ勢の試合を生中継しました。


このプロジェクトではJICAや国連開発計画と協働し、試合前やハーフタイム時にHIV/エイズの啓発活動やカウンセリングを実施しました。


未だにHIV/エイズの感染率が高いアフリカ諸国で、それまで正しい知識に触れる機会が限られていた人々でも、サッカーの試合に集まった観客にアプローチすることで、大きな効果を挙げました。


パブリックビューイングは2014年ブラジルW杯の時もコートジボワールで行われました。


SONYは2021年にJICAと途上国の課題解決とSDGs達成に関する覚書(MoU)を締結し、更なるインパクトの創出が期待されています。


本記事ではSONYが長年、アフリカで様々な取り組みを行ってきたことを取り上げました。同社の挑戦の数々は、これまで培ってきた経験とノウハウが土台となっています。


同社の今後の動向に目が離せませんね!







写真はイメージ画像。(筆者撮影)


参考資料

1.ソニーグループ株式会社HP、2023年10月20日閲覧

2.ソニー銀行、企業情報、2023年10月20日閲覧

3.アフリカクエスト、2016年3月15日、「アフリカ音楽コンテンツ市場が熱い!ソニーミュージックがナイジェリア・ケニアに新拠点!」、2023年10月20日閲覧

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