南アを拠点とするグローバル通信企業のMTNグループは1月30日、ベナン共和国の5Gインフラ整備に今後3年間で2億1500万ドル(約320億円)を投資することを発表しました。
この投資は、ベナンのパトリス・タロン大統領と会談するため、MTNグループのラルフ・ムピタCEO率いる代表団がコトヌーを訪問した際に発表されました。
同グループ子会社のMTNベナンは25年の運営実績を持ち、現在約800万人の加入者にサービスを提供しています。すでに同国で5Gサービスのトライアルを実施しており、有望な結果が出たことで、今回の巨額投資が発表されたとみられます。
巨大グローバル通信企業の多国展開
MTNグループは世界19ヵ国で、約2億9,200万人の加入者を抱えるグローバル通信企業です。
同社は1994年に南ア国営通信会社であるテレコムの子会社として設立され、2001年にヨハネスブルグ証券取引所に上場したことをきっかけに、事業を拡大させていきました。
同社の拡大戦略は、アフリカと中東の新興市場への参入を行うことでした。既存企業の買収と、新規ライセンスの取得を組み合わせ、積極的に他国へ事業展開しました。
同社の特徴の一つは、この多国展開の積極性です。ナイジェリアやコンゴ民といった巨大市場に留まらず、アフガニスタンやシリア、スーダンといった情勢が不安定な高リスク国においても果敢に市場参入を果たしてきました。
このように、高いリスクを厭わない事業展開を継続してきた同社にとって、ベナンのように比較的情勢が安定し、継続的な事業見通しが立てやすい国では、巨額投資にも踏み切りやすかったのではないかと推察されます。
ベナン政府とのパートナーシップを追求
ムピタCEOは今回の投資にあたって、「ベナンで5Gサービスを試行し、これを発展させる機会を得たことに感謝している」と前置きしつつ、「我々はベナンの若者の育成とスキルアップに尽力しており、この点で政府およびその他の関係者と提携する意向を明確にしています」と、ベナン政府と連携して事業を行うことを明確にしています。
タロン大統領も、MTNがベナン大陸全域の開発を推進するために献身していることに感謝の意を表しており、同社との連携に前向きな姿勢を見せています。
国際電気通信連合(ITU)によれば、ベナンで4Gが利用できる人口カバー率(2022年)は46%と、半分にも満たない状況です。このような状況でさらに踏み込んで、5Gサービス事業を拡大するために巨額投資を実行するという意思決定を行った当社の積極性には驚かされます。
日本の5Gが利用できる人口カバー率は、昨年5月時点で96.6%に達しました。近い将来、ベナンでもリープロッグ的に、全国どこでも5Gが利用できる状況になることに期待したいですね。
(イメージ画像はPixabayより。© fancycrave1)
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