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執筆者の写真長谷川 将士

AGOAに見る、米国とアフリカ諸国の揺れ動く関係性

南アフリカで11月2日、「アフリカ成長機会法」(AGOA)フォーラムが開催した。


AGOAは2000年からビル・クリントン元大統領によって実施されている米国の国内法で、貿易による貧困削減や雇用創出を目的として、サブサハラアフリカ諸国は該当する品目の米国向け輸出関税が免除される。


ただし、その資格が認められるためには一連の条件を満たす必要があり、米国の貿易・投資に対する障壁の撤廃、民主主義の支持、国際的に認められた人権の保護、米国の国家安全保障や外交政策上の利益を損なう活動に関与しないこと等が挙げられる。


米国は毎年参加国の資格を更新しているが、AGOAの条件を満たしていないことを理由に中央アフリカ、ガボン、ニジェール、ウガンダの資格停止が発表された。来年1月に適用停止が発行する予定だ。


適用停止が決まっている上記4カ国を除くと、AGOAは現在31カ国に適用されており、2025年9月30日に期限を迎えるまで取引を行う見通しだ。


フォーラム開催国の南アと衝突


AGOAの恩恵を最も受けているのは南アフリカであり、2021年には最大の輸出国として約27億ドル(約4063億円)の収益を上げ、そのほとんどが自動車、宝飾品、金属の販売によるものだった。


南アフリカは今回のAGOAフォーラム開催国だが、開催に至るまで米国と度々衝突を繰り返していた。3月にウクライナ侵攻に関するロシアへの非難決議を拒否したことで、南アフリカが必ずしも米国と共同路線を辿ってはいないことが明白となった。


5月に南ア駐在の米国大使は、南アフリカがロシアに武器を違法輸出した疑いがあると発言し、AGOAを停止すべきだとの意見が米国議会に出ている。


さらに、イスラエルでの紛争が勃発し、歴史的にパレスチナ擁護の立場をとる南アフリカは、益々米国とは異なるスタンスにあることを明らかにしている。紛争が勃発した後、同国のパンドール外相はハマス指導者のハニヤ氏と電話会談をしたり、最近はイランとの間では外相が相互訪問している。


AGOAフォーラム自体は南アフリカのロビー活動などにより開催はされたが、一連の動きが国益と外交政策に反するとして、米国の上院議員の間で南アフリカのAGOA適用停止を求める動きが出始めている状況だ。


外交圧力としてのAGOA


経済的利益だけに限れば、おそらくAGOAを歓迎しないサブサハラ諸国はないだろう。世界最大の経済大国と関税無しで貿易が行える経済的利益が巨大だからだ。


反面、外交圧力としての影響力も強大だ。代表的な例でいえば、東アフリカにおける古着輸入だろう。


東アフリカ共同体(EAC)は2016年、国内産業の振興のため、2019年までに中古衣料品の輸入を禁止することに合意した。また、輸入禁止には東アフリカ各国も賛同しており、政策レベルでも議論が進んでいる。


しかし、2018年にトランプ前米大統領は、ルワンダが古着の輸入を禁止したことを受け、AGOAの下で衣類を無税で輸出する権利を停止した。


米国国際開発庁(USAid)の調査によると、EACは2015年の世界の古着輸入のほぼ13%を占め、約2億7400万ドル相当であった。また、副資材・リサイクル繊維協会(SMRTA)は、EACの決定により約4万人の米国人雇用と1億2400万ドルの輸出が失われる可能性があると言及している。


古着の輸入禁止により、米国が経済的不利益を被ることは明白だ。そのため、米国は東アフリカ諸国にAGOA停止を始めとした圧力をかけ続けており、ケニア等の国では輸入禁止に踏み切れていないというのが現状だ。


一方、ウガンダは8月にムセベニ大統領が輸入禁止を発表し、10月末にAGOA資格を停止された様に、東アフリカ諸国が必ずしも米国に追従しているという訳ではないことが分かる。


上記で見てきたように、AGOAはサブサハラ諸国に大きな経済的利益をもたらしてきたと同時に、圧力装置として機能し続けてきた。


今のところ、2025年にAGOAは更新される予定だが、今後の国際情勢の変化により、米国がどのような条件や関係性を求めるかで、資格を停止される国は今後も出てくるだろう。




(画像はケニアに輸入された古着。©アフリカクエストより)


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