世界中で気候変動の影響が顕著になっている昨今、アフリカ地域は最も被害が大きい地域の一つとして知られています。これは、雨水に依存した農業、貧困下で十分な貯蓄がない人々、不十分な社会インフラ等により、被害が拡大する傾向があるためです。
歴史を紐解くと、アフリカでは過酷な自然に対して柔軟かつしなやかに対処し、生活様式を変化させながら、共存してきた蓄積があります。本記事ではアルジャジーラの記事に準拠しつつ、気候変動をバナナワインの生産によって乗り切ろうとするマラワイの人々についてご紹介します。
バナナワインで腐敗を発酵に
マラウイでは、トウモロコシ、コメ、キャッサバに次ぐ主食作物がバナナです。現在も多くのバナナを生産していますが、2010年から度重なる熱波、洪水、疫病の発生の影響を受け、一部の農園では次第に収穫量が減少しています。
またUSAIDによれば、2019年以来のサイクロンで1000人以上が亡くなり、数えきれない家屋と作物が被害に遭いました。さらに、2023年の洪水によりコレラが蔓延し、1700人以上が亡くなるなど、マラウィでは過酷な自然の変化に向き合わざるを得ない人々が大勢存在しています。
カロンガの平均気温は年間を通じて25~26度ですが、猛暑が続くとバナナはすぐに腐ってしまい、収穫時にはバナナがぐちゃぐちゃの状態になっていることが多くあります。こうなってしまうと、食べることもお金に換えることもできないため、バナナ農園の人々の生活は困窮するばかりです。
そこで、マラウィ湖にほど近い北部のムラーレ村のトウィトゥレ協同組合というグループでは、研修を受けながら熟しすぎたバナナを使ってワインを作り始めました。腐って無駄になってしまうバナナでも、発酵すれば商品となり、現金収入が期待できます。
研修を提供するコムシップ協同組合連合会の代表であるマーシー・チャルマ氏が「このプロジェクトは、このコミュニティの生計の源であり、マラウイのコミュニティが気候変動の影響とどのように戦っているかを示すものだ」と語るように、バナナワインの製造は日に日に困窮する生活を生き抜くための、彼らなりの『戦い方』の一つです。
苦難の中の希望
ワインの製造に課題がないわけではありません。ワインを冷やすための冷蔵庫は電気が通らないため役に立たず、苦肉の策として深さ5メートルの穴を掘り、ワインを貯蔵する前に温度計で音頭を測ります。
また、水道局が建設したパイプからは水が通らず、未だに協同組合では蛇口をひねっても水が得られません。
こうした苦難とは裏腹にバナナワインのマラウイ国内外での人気は上昇傾向にあり、マラウイ基準局による事前認証テストに合格しているため、商品としてのポテンシャルは高いでしょう。しかし、まだ正式認可には至っておらず、商業規模の販売も認められていません。そのため、現在は見本市でワインを紹介したり、小売店やホテルで非公式に販売するに止まっています。
ワイン生産に乗り出し、バナナ栽培専用の農園を手に入れた後、大雨で作物が壊滅的な打撃を受けたこともあります。
それでもトウィトゥレ協同組合のメンバーは再挑戦を決意し、次のように語ります。
「私たちは、バナナワインの生産を通じて、このコミュニティ全体を変えるまで、邁進し続けます。ヨーロッパやアメリカまで消費できるワインを作りたいのです」
世界でバナナを用いたワインはタンザニアが比較的認知されていますが、いまだヨーロッパやアメリカで普及が進んでいるとはいえません。地元コミュニティ発の試みがいつかより大きく花開くまで、今後も注目したいトピックです。
(イメージ画像はUnsplashより。©Louis Hansel)
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