1月15日、ナイジェリアでアフリカ最大級の製油所がついに運用を開始しました。
これまで原油産出国にも関わらず、効率的な精油が行われてこなかった同国では、大量の石油製品を輸入せざるを得ない状況でした。たとえば、推計では一日1億リットルのガソリンを輸入しており(国内消費量は一日約6000万リットル)、必要な燃料を確保するために莫大なコストをかけ続けてきました。
この製油所が順調に稼働すれば、輸入品への依存度を減らし、外貨不足に悩まされてきた財政事情を改善できるため、大きな期待が向けられています。
アフリカNo.1の大富豪が主導、自前調達を徹底
製油所はアフリカで最も富んだ富豪として認識されているアリコ・ダンゴテ氏が展開するコングロマリット企業により建設されました。
当初は2016年に稼働すると発表されていましたが、度重なる遅延を重ね、ようやく運用が開始されました。
ダンゴテ製油所の特徴は自前調達が徹底されていることです。国内の社会インフラが十分ではないナイジェリアでは、このような大型建設を実現する場合、残された数少ない選択肢は『自分で調達する』ことです。
ダンゴテ製油所の場合、重機を搬入するための港と道路の建設、重機を移動させるためのトラック運送会社、重機を組み立てるための工業用溶接施設等を自前で設立または建設しました。また、国内の不安定な電力供給を考慮し、製油所敷地内に435メガワットの発電所を自前で建設しました。
フィナンシヤル・タイムズ紙の記事では、このような建設のリスクを引き受けるアウトソース先が無かったため、自前で設計から施工まで行う必要があったとされています。
建設費はおよそ190億ドル(約2兆8000億円)。フル稼働によって国内だけではなく輸出も行える供給量を確保でき、年間210億ドル(約3兆370億円)の収益をもたらすと見込まれています。
いわゆる一般的な株式会社ではこのような芸当は真似できるものではなく、一大財閥コングロマリットならではの離れ業といえます。
引き受けるリスクも巨大
このように巨額の建設費を投じたダンゴテ製油所ですが、今後引き受けなければならないリスクも同様に、巨大です。
先ず、原油の調達が挙げられます。ダンゴテ製油所は昨年5月に一端は稼働を開始したと発表されましたが、国内サプライヤーからの原油の供給を待ち続け、実際には稼働していない状況が続きました。
いかに同製油所のインフラが整っていても、国内の他のインフラが貧弱であれば、スムーズな調達は実現しません。そして、スムーズな調達が出来なければ、その分だけコストは増加し、採算を取ることが困難となるでしょう。
また、ガソリン燃料の補助金が廃止されたため、価格が高騰している点も気がかりです。ナイジェリアでは大量の原油が横流しされ、違法な製油所で危険な精製が行われています。補助金廃止をきっかけに、ダンゴテが建設したパイプラインを住民が破壊し、原油を盗難するというインセンティブは上昇しています。
特に、世界最長とされる1,100キロメートルのパイプラインをどのように保全し、管理するかは容易ではありません。
ビジネス界隈ではダンゴテ製油所の稼働を歓迎している意見が多く見られるものの、その枕詞には「順調に動き続ければ」という枕詞がつくことに留意が必要でしょう。