日本貿易振興機構(JETRO)は12月21日、海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)を発表しました。
JETROは毎年、同調査の結果を発表しており、進出国の市況感を理解する上で貴重な情報源となっています。
今年度はアフリカ地域の20ヵ国、235社が回答しました。
黒字見通しが増加、大国で好況の見通しか
アフリカ進出企業の内、58.4%が黒字の見通しと回答しています。ウクライナ情勢の影響が懸念されていた昨年よりも9.5ポイント増加しました。
域内の経済大国を拠点とする企業で黒字見通しという回答が多く、国別では南アが86.0%、エジプトが72.7%、ナイジェリアが63.2%という回答となっています。
営業利益改善の理由は前年同様に「現地市場での需要増加」(49.3%)、「現地市場での販売体制強化」(37.0%)が多数です。
逆に、2023年の営業利益悪化の要因としては「為替変動」(48.6%)、原材料・部品調達コストの上昇(43.2%)を上げる回答が多く、マクロ経済や物流に不安を抱える企業の市況感がうかがえます。
ケニア、エチオピアで事業拡大の機運
アフリカ全体では、今後1~2年の事業展開について「拡大」と答えた企業が前年から0.5ポイント減の54.0%となりました。
事業拡大と回答する企業が多かった国としてはケニア(43社中29社)やエチオピア(5社中5社)が特徴的です。
特にエチオピアは進出企業の全てが事業規模を拡大する見通しと回答すると顕著です。
同国では2020年から北部で紛争が勃発したり、無関税の特恵待遇を受けられるアフリカ成長機会法(AGOA)が停止中など、マイナス材料もあります。
一方で、ケニア最大の企業でモバイルマネーサービス大手のサファリコムが進出し、ユーザー数が300万人を超えるなど、市場の潜在性は大きく、注目を集めています。
競合は「日本企業」、欧州系企業にも肉薄
今年度の調査で最も変化が生じた項目はおそらく競合関係についてでしょう。
競合にある企業については従来、欧州系企業や中国系企業と回答する日系企業が多く、昨年はそれぞれ25.9%と19.3%でした
しかし、今年は欧州系企業が18.7%に対し、同じ日系企業と答えた企業が17.8%もありました。
競合企業の第二位として日系企業が浮上したのは2020年以来ですが、欧州系企業とここまで肉薄している状況は、過去に類を見ない結果となっています。
この結果が示すことは、これまでファーストペンギンやアーリーアダプターといった企業がリスクを取りつつ、アフリカ市場を切り開いてきました。
今後はアフリカ市場において、同じ日系企業がライバルとなり、案件獲得に向けて競争する場面が顕著に増加する前触れとなるかもしれません。
これは日系企業間でアフリカ進出が成熟し新たな局面に突入したことの現れと捉えることができるでしょう。
注目国はケニアがトップ、ナイジェリアも台頭
最後は今後の注目国をみていきましょう。
トップは例年と変わらずケニアでしたが、直近5年では最高の45.3%を誇るなど、アフリカ進出企業の中でもケニアの注目度が高まっています。
一部では既に市場として成熟してきた感もあるケニアに対して、今後の潜在性をどこまで期待できるかという見方もあります。
ただし、安定した経済成長に加え、高いモバイルマネー普及率や最先端テクノロジーとの親和性等、市場関係者の関心を得る要素が多くある点が、この結果に反映されたのでしょう。
二位は昨年の南アを抑えて、ナイジェリアが34.9%を獲得しました。市場の潜在力はアフリカ随一ですが、為替のレートが複数あったり、インフラが貧弱であるなど、多くのリスクも抱えています。
それにもかかわらず有望な進出国として選ばれている理由としては、市場規模や人口増加、石油・資源、自動車などで成長や拡大を期待する声が多いためです。
日系企業のアフリカ進出も徐々に新たな局面に入りつつありそうですね!今後の更なる成長に期待しています!
(イメージ画像はUnsplashより。© Kyle Glenn)
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