中国経済の成長鈍化はシンクタンクやメディアを中心に関心を集めています。
キャノングローバル戦略研究所のコラムによれば、8月以降は消費や製造業設備投資等で穏やかに回復しているとしつつも、先行きの不透明感が強く、経営者や消費者による経済成長への期待が弱まっているとしています。
特に、雇用環境の悪化は鮮明で、すでにネットからは削除されましが、北京大学の研究者が若年層(16~24歳)の失業率は46.5%に達したとの試算を示しています。
このような状況で、国際通貨基金(IMF)は中国とサハラ以南アフリカ(以下、サブサハラ)の経済関係が変化し、成長、貿易、投資への影響が懸念されると指摘しています。
中国は過去20年間、サブサハラ諸国と深い経済関係を築き、最大の貿易相手国となっています。中国はサブサハラ地域から輸出品(金属、鉱物、燃料)の5分の1を購入し、サブサハラ諸国が輸入する製造品や機械のほとんどを供給しています。
以下では、中国経済の減速がサブサハラ諸国に与える影響と、今後の関係性についてご紹介します。
中国経済の減速によりサブサハラの成長も減速
中国経済の減速がサブサハラにとって何故問題となるのでしょうか。IMFが発行する最新の『地域経済見通し』によると、中国の成長率が1%ポイント低下すると、サブサハラ地域の平均成長率が1年以内に約0.25%ポイント低下する可能性があるとしています。
特にアンゴラやナイジェリアなどの石油輸出国にとっては、平均で0.5%ポイントの損失となると推計されています。
中国がこれまでサブサハラ諸国へ多額の融資をした背景には原油等の資源確保の目的があるため、これらの産油国への影響は特に大きいでしょう。
サブサハラに貸せない中国
減速の波及効果は、中国からサブサハラ諸国への公的融資にも及んでおり、昨年は10億ドルを下回り、過去20年近くで最低の水準となりました。
これはアフリカ諸国が公的債務の増大に苦しむ中、これまで中国が行ってきた大口のインフラ融資からシフトしたことを意味します。
サブサハラにおける中国の融資は2000年代に急増し、対外公的債務総額に占める中国の割合は2005年以前は2%未満でしたが、2021年までに17%に跳ね上がりました。
これにより、中国は域内諸国に対する最大の二国間公的債務の貸し手となりました。
ただし、中国が負っている債務の割合は、サブサハラ地域の総公的債務の6%弱と比較的小さいことに加え、そのほとんどがアンゴラ、カメルーン、ケニア、ナイジェリア、ザンビアの5カ国に集中しています
また、2016年をピークにサブサハラへの公的融資は鈍化しており、中国が次第に『貸せない』傾向が強まっています。
貿易・経済構造の再編が急務か
IMF は地域経済の分断化が進む中、サブサハラ諸国が域内拡大を通じて強靭性を増し、税制改革や歳入管理の改善などを通じて、中国の成長鈍化と経済関与の低下に適応する必要があると主張しています。
経済構造を多様化する努力も、将来の成長を維持するために不可欠です。レアメタルやレアアースといった再生可能エネルギー開発を支える鉱物に対する旺盛な需要は、各国が新たな貿易関係を築き、より現地での加工能力を開発する機会を提供する可能性があります。
サブサハラ諸国の中で経済力が比較的ある国の多くは国内生産の重要性を強調し、少しずつ政策へと組みこみ始めています。
希少資源の確保に各国が奔走する中、現地生産という視点から、アフリカ諸国と新たな関係性の構築を目指す国も今後出てくることでしょう。
コロナ禍以降、サブサハラ諸国における中国の存在感は以前よりは減衰しつつあります。それと同時に、昨今顕著となっているグローバル経済構造の変化の最中、サブサハラ諸国の重要性が増している状況です。
(イメージ画像はPIXABAYより。© TheDigitalArtist)
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